東日本大震災から1年が過ぎようとしているが、被災者たちの多くはいまだ寒さをなんとか凌ぐだけの“応急”仮設住宅に耐え忍んでいる。しかし、もっと快適でしかも安価でつくれる仮設住宅があるとすればどうだろう。阪神?淡路大震災以来、国内外で仮設住宅の在り方を検証している、神戸大学工学部教授の塩崎賢明氏が問題点を指摘する。
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東日本大震災に見舞われた東北の被災地には現在、長屋形式の応急プレハブ仮設住宅が5万2000戸完成している。その入居率は9割、つまり、1割の仮設住宅が空き家状態なのである。
建設当初から居住者の不満の声が多い仮設住宅の問題点を指摘しよう。大きく分けてハードの側面とソフトの側面の2点がある。
ハード面での大きな問題は、居住性能である。施工不良による雨漏りや隙間など被災者からの苦情によって、建設後、修復対応に追われるということが発生したが、より根本的な問題は、規格タイプの鉄骨系プレハブ住宅は、断熱性?遮音性が低く、居住性能が非常に不十分なのである。
入居した直後の被災者から、暑くてたまらない、雨の音でテレビも電話も聞こえない、などの不満の声が聴かれ、昨年の夏には熱中症になる入居者が続出した。
その後、冬に向けて外壁に断熱材を貼り付ける追加工事が行なわれたが、居住者の反応は「やらないより、ちょっとはマシ」くらいのものであった。仮設住宅は災害救助法で原則2年とされているが、東北の寒冷地でふた冬を無事に越せるのだろうか。
こうしたことは、今回に始まったことではなく、阪神?淡路大震災以来、何度も経験してきたことである。それが震災から1年が経とうとしているにもかかわらず改善されないままに繰り返されている。
居住性の点では、冬暖かく夏涼しい木造仮設住宅が優れている。今回、岩手県の住田町という地域と福島県は、この木造仮設住宅という新たな取り組みを実施した。
震災以前から地元の杉材を生かした木造建築の取り組みが行なわれてきた住田町は町長のリーダーシップで、いずれ来る大災害に備え、一戸建て木造仮設住宅の設計が完成していた。そして震災発生直後から建設に取りかかったのである。
住田町は内陸部に位置し、大きな被害からは免れていたが、完成した木造仮設住宅には陸前高田などの被災者が入居している。木の香りが漂い、入居者の評価も高い。
福島県では、県が仮設住宅の建設事業を公募、建設予定4000戸の募集に対して、28業者から総数1万6226戸の応募があった。…