独立行政法人情報通信研究機構(NICT)が、7月18日から、iPhone向けアプリとして、一般に無料公開しているネットワーク型の多言語音声翻訳アプリ「VoiceTra4U-M」は、そんな夢の実現に、もうかなり近づいていることを予感させるものだ。
使い方はいたって簡単。App Storeからダウンロードし、アカウントを作成後、自分の言語を選択するだけ。話す相手にも同様に相手の言語で選択をしてもらう。
アプリの機能を使って、コール(電話)して、接続後画面のマイクボタンを押してから会話すると、自分の声が相手側の言語に、相手の言語がこちらの言語に自動翻訳され、音声やテキストで出力される。
VoiceTra4U-Mの特長は大きく二つ。一つは、日本語、英語はもとより、中国語、韓国語、ポルトガル語、タイ語、ベトナム語、マレー語など、実に23言語(うち音声入力17言語)に対応していること。各国研究機関の音声翻訳サーバを相互接続することで実現した。世界人口の95%をカバーしているという。
もう一つは、最大5人の同時接続が可能なことだ。例えば、日本人、アメリカ人、中国人、ブラジル人、ベトナム人でグループ通話ができる。この場合、例えば日本人が日本語で話した内容は英語、中国語、ポルトガル語、ベトナム語に翻訳され、それぞれの端末から出力される。あるいは、中国人が中国語で話した内容も、それぞれの言語で出力される。まさに言葉の壁を突き崩すガジェットだ。
ただし、現時点ではまだいくつか制約や課題がある。まず、「主に旅先での会話を想定し、翻訳できる語彙を旅行関連に絞っていること」。さらに、「およそ1~2割の確率で誤訳が発生する可能性」「文章の長さは平均6単語まで」「声を翻訳して出力するのにやや時間がかかる」などだ。
つまり、旅先で対面での簡単なコミュニケーションを楽しみつつ、もし誤訳されて伝わった様子が見られたら訂正する、といった使い方が現実的のようだ。なお出力の遅延は、NICTが現在システムを改良中で、8月中には改善される見込みという。
NICTでは、アプリの公開を実証実験と位置付け、来年3月31日まで継続する予定だ。…