【海外：中国】愛車が増えても守りたいのは「景観」と「生活導線」だ
水の都、イタリアはベニス（ヴェネツィア）。この独特な欧州都市へ足を踏み入れた方は、その都市としての「まとまり」、一種の「世界観」に驚いた事でしょう。こうした街の圧倒的な情緒に一役買っている要素のひとつは、建築のみならず、「自動車が一台もない（入る事が出来ない）」という交通状況でもあります。
自動車は「利便性」を獲得する代わりに、「都市の大気」、「街の景観」と「人の生活導線」を代償とします。自動車の排気ガスは当然ながら大気を汚染し、都市としての統一感に損害を与え、道路による生活導線の分断により、人々の安全かつ円滑な歩みを阻害します。
私は上海にいますが、特にこの交通状況は切迫する問題です。単に自動車が多いだけではなく、交通マナーの質が極めて低いことも問題です。この狭い世界都市の中で、我先にとクラクションを鳴らし、歩行者を蹴散らすように走り去る自動車の群れが、都市文化としての完成度を低めていることは否めないところです。
さて、20日付けの上海紙?新聞晨報（A10面）によりますと、上海市の交通担当当局が専門家の予測として、ナンバープレート競売(※上海ナンバー登録はプレートの特別登録が必要。費用50～100万円前後）など現行規制を継続しても、上海ナンバーのマイカーが2015年には10年比2倍の200万台に達するとの見通しを明らかにしているそうです。
一方でこの間、道路の許容交通量自体は2割増しか見込めないと強調しています。この計算ですと、単純に現行の交通量の1.6倍の混雑が予想される事になります。上海市民の足である公共バス（運賃一律約26円)、タクシー（運賃初乗り約182円）を始め、輸送関係にも大きな滞りが生ずることは必須の構えと言えましょう。
交通は文字通り、パンク状態です。近未来に向けて開発すべきは、自動車の環境性能そのものに加え、その自動車という交通手段を運営する為の、画期的なシステムの構築だと言えます。地下や上空を使った三次元的な交通システムが、どうしても必要になるのではないでしょうか。もっとも、それらは当然、環境や景観に配慮したものでなければなりません。
【記事：G?JOEⅡ】
元の記事を読む