宿題は家ではなく学校でするもの 学校教育の未来形Khan Academy【湯川】
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最近、教育の未来についてあれこれ考えている。10年ほど前にも記事を書くために考えたことがあって、そのとき教育の未来は次のようになるというのが自分なりの結論だった。
?最も効果が高いのは「個人教授」。ただコストパホーマンスを考えれば現時点では、教師一人が何十人かに教える「教室型」しかない。今後、ITの進化で教材がデジタルになれば、「デジタル教材」の効果は「教室型」を超え、「個人教授」に近づく。
?教師から生徒への知恵の一方通行ではなく、だれもが生徒になり横同士のピア?ツー?ピアの教育が中心になる。
?教材はすべてデジタル化され、オープンソースソフトウエアのように世界中の人たちによって、寄ってたかって改良されるものになる。
先日、すぐれたウェブサービスにおくられる米国のWebby Awardの教育部門にKhan Academyが選ばれたというニュースを読んで、Khan Academyのことを調べてみたが、10年前のこの予測がかなり現実のものになってきていることが分かった。 Khan Academyは、ヘッジファンドのアナリストだったSalman Khan氏が始めた非営利団体。ビル?ゲイツ氏の財団やGoogleからの投資を受けて運営されており、幼稚園から高校までの算数を中心に生物、化学、物理など3100のビデオを無料で視聴できるようになっている。
ビデオのほとんどはKhan氏が一人で作成したものらしい。特に凝ったビデオではない。プロの映像製作会社の作品とはほど遠く、ただ画面に数式が書かれてKhan氏の解説が聞こえるだけのシンプルなものだ。Khan氏本人の姿が映し出されることもない。こうしたシンプルなビデオのほうが、教壇から教えるという見え方ではなく、並んで座ってノートに数式を書きながら教えるという見え方になって、かえっていいのだという。
同氏が講演したTEDのビデオ(日本語字幕つき)によると、月に約100万人の生徒が利用、1日当たりのビデオ再生回数は10万回から20万回にもなるという。
Khan氏が算数のビデオを作成し始めたのは2004年のこと。同氏の13歳の従姉妹Nadiaちゃんから算数を教えてほしいと頼まれたため。ボストンに住むKhan氏は、ニューオリンズに住むNadiaちゃんとパソコンの画面共有ツールを使って数式を画面に書きながら電話で家庭教師をし始めた。…