エンタープライズ0.2 - 進化を邪魔する社長たち - (152) 社員を監視する社長の気持ちから自爆した「監視0.2」
某牛丼チェーン店のアルバイトを名乗る男が「自分が吐き出した物体を商品に混入させた」とツイッターでつぶやき、チェーンの本部企業が謝罪コメントを発する騒動に発展しました。
事実関係を確認したところ、事件を起こした当日に勤務はなく、それ以前の勤務時にも異物を混入させる行為がなかったことが記録から判明したと、公式ホームページでの釈明に追われたのです。
この牛丼チェーンは、全店舗で客席はもちろん厨房の中の従業員の動きまで、カメラで撮影し本部で監視しています。
あるテレビ番組の取材で監視の理由を問われた際、「作業効率を改善して利益率を高めるため」と答えていました。
スタッフの厨房内での動きを監視し、一歩二歩の歩き方までマニュアル化し、徹底させるためにも監視するというのです。
番組を見て、そこまですることへの嫌悪感を強く抱きましたが、今回のケースは監視記録によって救われました。
普通の企業では、アルバイトの一挙手一投足を客観的なデータから追跡調査することは不可能だからです。
しかし、どれだけ監視カメラの台数を増やしたとしても、従業員の心の中まで監視することはできません。
社長という職業は孤独なものです。
決断を下し、責任を一人で背負っているのは事実。
仮に倒産した時、社員に同情が寄せられることはあっても、社長は経営責任から逃れることはできません。
ライバルとの競争に加えて社員の造反にも怯えており、社長室に盗聴器が取り付けられていないかと大騒ぎしていたのは、かつての勤務先の社長でした。
そして業績が良い時はまだしも、低迷が続くと目の届かないところで社員がサボっているのではないかと疑心暗鬼に支配されます。
そのためか、監視カメラを設置したがる社長は少なくありません。
防犯カメラではなく、監視カメラです。
社外からの侵入者を記録するのではなく、社員の働きぶりを見張るためのカメラです。
理由は先に述べた通りの不安が一番ですが、社長という人種はすべてを自分の管理下に置きたいという支配欲が強く、自分がいないフロアで行われているすべてのことを知りたいと願います。
A社長もその一人です。
加えて「自分が一番仕事ができる」と信じており、「社員一人ひとりの仕事ぶりをチェックして指導するために」と、新社屋建設にあたり各フロアに監視カメラを設置しました。
新社屋には居住スペースを兼ねた社長室も設置されました。
「社員よりも早く出社し、遅く退社する」と自慢するA社長は、通勤時間をなくすためと説明しますが、もちろんこれも「監視」のためです。…