NTT、暗号化データを統計分析する秘密計算技術を医療統計処理で実証
NTT は2012年2月14日、浜松市の日本成人白血病治療共同研究グループ(JALSG)と、臨床研究データなど秘匿が必要なデータの活用を目的とした秘密計算技術を、世界で初めて実証した、と発表した。臨床研究データを暗号化したまま統計分析を実施でき、性能は実用化に即した速度を達成した。
NTT 情報流通プラットフォーム研究所は、データを暗号化したまま統計処理結果を得ることができる秘密計算技術の研究を進めてきたが、秘密計算技術は理論上安全であるが処理速度に課題があった。
JALSG と NTT は、JALSG の臨床研究データを対象に、NTT の秘密計算技術を活用、医療統計分析を実証する研究事業を共同で開始した。
NTT は、データを暗号化したまま統計処理を行い、その計算結果を安全かつ効率よく導くことができる秘密計算技術の実現方式を考案、試作ソフトウェアを開発した。この試作ソフトウェアで、NTT 独自の設計とアルゴリズムを開発、汎用型秘密計算システムを構築した。
今回開発されたプロトタイプには、平均、分散、中央値などの基本的な統計値演算や、そのほか Kaplan-Meier 法などの医療統計で用いられる機能が実装されている。
JALSG の約1,000症例×800項目の臨床データを用い、汎用的な PC で秘密計算技術の速度性能の評価を実施した。その結果、一般統計分析では平均?分散の計算が1秒以内、中央値の計算も5秒以内で完了、実用的な処理速度を実証した。
JALSG は1987年に多施設共同臨床研究グループの先駆けとして発足し、日本全国の白血病治療のレベル向上を目指して数々の臨床研究を実施してきた。現在では213の医療施設が参画し、成人白血病の標準的治療の確立に貢献している。
一方、個人情報である臨床研究データを集約して預かる医療施設では、患者のプライバシーを守るセキュリティ対策が課題となる。臨床研究データを安全に取り扱いつつ、医療統計分析を実施できる技術が必要だ。